大切なことは全部リスティング広告が教えてくれた

リスティング広告運用者からWEBメディア編集者へ。そこで学んだことを色々まとめてみるよ。

リスティング広告で得られたポータブルスキルがとても大事だと思う話

正直言って、ここ最近リスティング広告には触れていないので、Adwordsのこととか、最新の機能や傾向などはよく分からなくなっています。リスティング広告に関する細かな知識やスキルは、いわゆる”テクニカルスキル”に属すると思うので、いつだって最前線で接していないと衰えるんでしょうね。もしリスティング広告でご飯を食べようと再起するには、それ相応の努力が必要だと感じます。

 

でも、それでも、体に染みついたスキルがリスティング広告を通じてあると思っています。いわゆる”ポータブルスキル”のことで、社会人になって初めてやった仕事がリスティング広告運用で本当に良かったなって考えてます。前回は「なんで嫌われるの?」っていうのを考えてみたので、今回はそのアンサーソングばりな話です。正直、この数年のインターネット広告業界は「アドテクアドテク、アドテクー」と狂ったように叫ばれていて(最近その反省論も出てきてほんわか)、大事なことを見失ってんじゃないの?とも思っていたので、そんなアドテク本位な人材に対する警笛でもあります。

 

そもそも身につけるべきスキルを改めて整理してみる

ではそのスキルとは!?に入る前に、もっと前提の話を簡単にします。ビジネスマンが身につけるスキルって色々あるというのは、よく研修とかでも話を聞くと思います。ざっくりまとめると・・・

 

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こんな感じでしょうか。(自分らしからぬポップな色使い・・・汗)

ヒューマンスキルがおおもとのベースになって、次にポータブルスキル、

最後にテクニカルスキル、といったもの。それぞれの解釈を自分なりに説明すると、

 

ヒューマンスキル

 その人の人間性とか、これまでの人生で後天的に身に付けたもの

 (雑に言うとキャラ、価値観、性格、など)

 

ポータブルスキル

 どんな仕事でも活躍する文字通り「持ち運び可能な」スキル

 (ロジカルシンキング、コミュニケーションスキル、アウトプットスキルなど)

 

テクニカルスキル

 その仕事に必要な専門的スキル、ここでいえばリスティング広告のスキル

 (媒体知識とか、QSの理解とか、順位決定ロジックとか、事例・ノウハウとか)

 

です。特にビジネスシーンではポータブルスキルとテクニカルスキルを日々磨くことになるんだと思います(実はヒューマンスキルこそ肝だ、と最近教えを受けましたがその話はまた今後)。

で、タイトルの通り、リスティング広告で日々運用しているので最後の「テクニカルスキル」に目が行きがちだけど(もちろんリスティング広告のプロだからこのスキルを磨くのは当たり前です!!!)、本気でやったらポータブルスキルが凄く磨かれているんです!これが自分がリスティング広告に本気で向き合って良かったと思えることの1つです。

 

ではここから具体的にどんなスキルが磨かれるかまとめたいと思います!

 

その1:ロジカルシンキング

もともと感覚でしか物事を捉えられなかった自分が、リスティング広告に関わったことでゼロベースで身につけられたスキルです。まだそんなキレッキレなロジカル人間!ではないですが、そこそこかなと(振り切り過ぎても危ないので)。

これはリスティング広告だけに限った話ではないですが、ウェブ広告の指標というのは数式化することが可能です。コンバージョンで言えば「IMP×CTR×CVR」ですし、CPAで言えば「CPC÷CVR」です。リスティング広告というのは、このコンバージョンとCPAをとにかく突き詰める広告手法ですから、他のウェブ広告を扱っている人よりも、この数式がやたらと全身に染み付きます。

毎日のように「コンバージョン何件だ?CPAいくらだ?」って追いかけてるので、それを構成する指標である「CVが減ってる!なんで?」「IMPはどうなった?」「なんでCTRがこんなに下がったんだ?」「競合がタイトル説明文変えてきてないか!?」と、コンバージョン・CPAの変化に対して、「WHY?」を2回も3回も掘り下げていきます。あらゆる可能性を考えて分析していきますのでMECE的な思考になっていきます。学生時代に習った感じで言うと、結果に対して徹底的に因数分解するイメージ。

 

そんなことを繰り返していると頭の中はこんな絵ができあがることになるんですね。

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いわゆる「ロジックツリー」みたいなもので、縦の論理と横の論理が成り立った思考になってきます。 (本当は要因1の要因1の要因1、みたいにさらにWHYが深掘られるケースが多いですがスペースの都合上割愛・・・)

 

縦の論理=「本当にそうなの?なんでそうなるの?」

横の論理=「他にないの?本当にそれだけ?」

 

です。

こんくらいまで考えられると結果に対して、課題も見えてくるし、そこに対してクリティカルな打ち手も考えられるんじゃないかと思います。これって決してリスティング広告だけで必要なことじゃないですよね?

 

その2:森から木への思考順序

 リスティング広告っていうと管理すべき対象キーワード数が多過ぎて、全部と向き合ってたら24時間じゃ足りません。でも数字目標を達成しないといけない。じゃあどうするか?

「森から木へ」、大きな枠組みから捉えて、問題点を発見したら、細かなところまで見ていく。そういうことです。

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キーワードは森なのか木なのかと言われれば木です。いや、むしろ木でもなくて枝かもしれませんが。どうしてもエクセルとの戦いをしていると細かなキーワードレベルで捉えがちになりますが、それでは大きな動きを読み取ることはできませんし、インパクトの大きい打ち手を見出すことはなかなかできません。そして、最適解に対して最速で辿り着くこともできません。この森から木への思考順序を身に付けることで、リスティング広告の運用効率は上がるし、効果自体も数%のレベルではなく数十%のレベルまで改善させることが可能です。クリティカルなもの、大きな流れを把握する視点、リスティング広告のようなインターネット広告の中でも細かな運用を求められる商材だからこそ、それが身に付くのです。

 

その3:インサイトの洞察力

リスティング広告を運用していて「ユーザー態度」の把握に役立つ指標は3つしかありません。検索数・CTR・CVRです。検索数は「何故このタイミングで伸びたのか、減ったのか、大きな検索数の流れは、今どんなワードの検索数が伸びてるのか」、CTRは「他にも並ぶ広告の中で何故この広告がクリックされたのか、されないのか」、CVRは「何故あの広告を見て、このページを見た人がアクションに至ったのか、至らなかったのか」など、そのあたりを”ざっくり”と把握することが可能な指標です。

その”ざっくり”とした把握から、より深く切り込んでいく。私はその点に力点を置いてリスティング広告運用を行っていました。そもそも担当している広告主の業界は売り手が優位か、買い手が優位かで運用の考え方は全然変わってきますし、ユーザーのインサイトもがらりと変わります。しかもそれは普遍的なものではなく、時代が変われば一緒に変わってくるし、併載される競合企業によっても変化するので厄介です。検索数・CTR・CVRは、そんな深い思考の入り口のドアを開けるきっかけになってくれる指標です。こいつらの変化を見逃さず、インサイトの洞察力を高めていくのがリスティング運用の醍醐味だと自分は思っています。

 

その4:アウトプットスキル

リスティング広告は毎週・毎月のようにその実績をレビューします。しかも、予算の中で最もリスティング広告に最も比重高く割いている広告主も少なくないので、純広告のようなエクセル表で効果表一枚+コメント、程度の浅いレベルでは切り捨て御免ものです。ただでさえ管理している変数が劇的に多い上に、お客様が大注目している商材なのでアウトプットは相当な気合いと気配りが必要になってきます。何なら「完璧なフォーマット」というのはなく、お客様の特性に合わせてカスタマイズする必要もありますし、広告予算の大半を占めている商材なので「そのまま上司に報告できる資料」にしなければならない場合もあります。

そうすると、自ずと複数のアウトプットパターンを学び、身に付けることになります。業務効率観点ではレポートを定型化するのがベスト、会社目線ではそれは正しいでしょう。ただリスティング広告の運用を「いち個人の人材価値向上のための訓練」と考えるならそれはNGです。どんなに非効率でもカスタマイズすることこそその人個人のスキル向上に必ず役立つと私は思います。私はこれまでどの広告主にも他と同じレビュー資料を使ったことはありませんし、同じ広告主でもずっと同じフォーマットではなく、毎回のようにアレンジを加えて常に”ベストは何か”を探究していました。それでもCSは非常に高く、粗利を稼ぎ、営利も抜群に良かったと自負しています。見た目は非効率でも、それによって得られる価値は、それ以上だったはずです。私は、楠木建さんの有名な著書「ストーリーとしての競争戦略」が大好きですが、ここで述べられているWTP(Willing To Pay)とCostの話で言うと圧倒的に前者を高めることを追求してきたんだと思います。自分が現場で運用していた時は、市場成長率も好調だったので、WTPを高めればそれ以上の対価が得られたんですね、今は過去ほど市場成長率が高くなくなってきたのでCost観点が必要だとは思っていますが。。。

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その5:プレゼンテーションスキル

レビューをする機会が多いということは、自ずとプレゼンする機会も同じ数あるということです。何を隠そう私はもともとこのプレゼンというのが大嫌いで、部内などで行われるプレゼン大会やロープレなども何かしら理由をつけて全て避けてきました。実際にお客様の前でプレゼンする時もそれはもう酷いものでした。それでも、数をこなし、都度反省点を挙げて次に活かす、ということを繰り返していけば誰だって成長できるものです。リスティング広告コンサルタントって何が魅力?」とよく聞かれることがありますが、その時に必ず答えていたことのひとつに「まだ20代の社会人としてペーペーな若者が、リスティング広告という華の商材を扱っているだけで、社会人の大先輩であるマーケッターの方やお客様に堂々と対峙しプレゼンする機会を得られるんだよ、それってスゴくない?」と話していました。今でもそれは本当にそう思います。貴重な貴重な経験なんです。

 

その6:マーケティングマインド

その1のロジカルシンキングでWHYを深堀していく中で、必ず必要になってくるのがこのマーケティングマインドです。よくあるマーケティングのフレームワークの中でも、とりわけ3Cを利用することが多いのがリスティング広告です。3Cとは言わずもがなCompany(自社)・Competitor(競合)・Customer(市場・ユーザー)の3軸で考えるフレームですが、ここにMedia(媒体)を加えて「3C+M」というフレームでよく分析したりします。フレームを活用するのははっきり言って表面的であれば誰にでもできるわけで、ここで敢えて”マーケティングマインド”と言っているのには理由があります。フレームをいくら使っても表面的な分析しかできず、ありきたりな示唆しか導き出せないのであればあまり意味はありません。何が本質で、クリティカルか、何故この商品は売れたのか、売れなかったのか。それらの「売れた理由」「売る術」ととことん向き合うことが重要で、そうすることでマーケティングマインドは磨かれていくものだと思います。

 

その7:PDCA

これはリスティング広告従事者の真骨頂と言っても良いスキルでしょう。以下前回のエントリーでも触れましたが、リスティング広告は「半永久的な改善が要求されるエグい商材」なんですね。だからこそ、結果を受けてリプランニングし、それを実行し、結果を分析し、また次のアクションに繫げて改善を図らなければなりません。

iroakiata.hatenablog.com

 これ、やっている間は本当に大変だし辛いことも多いのは確かなのですが、この徹底したPDCAを愚直にやってきた人ってまだまだ業界には少ないんです。やってたとしても途中で投げ出しちゃった人とか、そんな大変そうなの絶対嫌だと関わってこなかった人たちがいっぱいいます。でも世の中のあらゆるものがデジタル化していくこの世の中。この愚直なPDCAができるかどうかは、必ず人材価値の差として生まれてくると思います。だから、逃げずに、貪欲にリスティング広告と向き合う。お客様にパフォーマンスをお返しする。そのことを突き詰めていけば、花は必ず開けます。

 

その8:逆算能力

たとえば目標のCPAが1000円だとして、現状が2000円だとします。そうするとCPA=CPC÷CVRですから、CPCを半額にするか、CVRを倍にするか、もしくは双方を改善する必要が出てきます。じゃあそのために何ができるか?を考えていく。「目標と現状を整理し、ギャップを把握し、それを埋めていく取り組みをしていく」という目標からの逆算を実はリスティング広告運用では日々行っていたりします。この逆算能力というのは、リスティング広告に関わらず、プロジェクトを動かす際や何かゴールがあるもの、つまりはほぼ全てのビジネスにおいて必要になってくるので、リスティング広告という小さな単位ではありますがしっかりそのスキルを身に付けることはできるのです。

 

 さいごに

ざっとまとめるとこんな感じでしょうか。他にもあるよ〜って方がいたら是非コメント寄せてくれると嬉しいです。過去にもところどころ触れていますが、リスティング広告に「本気」になった人はこういったスキルを身につけることができると思います。ただ、残念ながら「本気」でない人が少なくないのが現状で、ここで挙げたスキルもそれなりにしている人では全然身に付いていないのです。だからもっと「本気」になろうよ!って話なのですが、ではその「本気」って何なのか?それは「プロとしての姿勢」と「顧客向き合い」です。

 

これを語り出すとまた長くなるので今日のところはこのへんで。

 

長文にお付き合いいただき、有り難う御座いました。